ジュエリーの地金に関するちょっとしたコラム

ジュエリーに使用される貴金属たち

希少性と化学的な安定性、そして美しい色合いを兼ね備えている貴金属。

中でも、ジュエリーの主材料として多く用いられるのが金、銀、プラチナの三種類です。

これらは、それ自体は非常に柔らかい素材で、純度100%の状態では加工や形状維持が困難、また容易に傷がついたりしてしまうため、ジュエリーやアクセサリーでは割り金(わりがね)として銅やパラジウム、ニッケル、亜鉛などを添加して合金にすることが一般的となっています。

●金(ゴールド/Au)

ジュエリーではK18としての使用が多く見られ、中でもイエローゴールドは定番の素材。銀や銅を割り金として添加することによりピンク、ホワイトなど様々なカラーに調整を行うことが可能です。

●銀(シルバー/Ag)

シルバー925、つまり銀の含有率(純度)92.5%で使用されることが主流。中でも割り金に銅のみを用いたものを、日本ジュエリー協会の定めではSterling Silver(スターリングシルバー)と呼称します。”スターリング”とは「本物の」「価値のある」といった意味を持ち、また、後述する硫化に対しても一定の耐性があり、国際的にもスターリングシルバーが純銀と見做されています。

銀は空気中の硫化ガスと反応して膜を形成する性質があり、これにより徐々に黄色く、最終的に黒く変色しますが、磨き直しにより輝きを取り戻すことも可能です。

●白金(プラチナ/Pt)

特にブライダルジュエリー向けなどに人気の素材。プラチナの純度はシルバー同様に1000分率で表記され、日本国内で宝飾品として販売される白金はPt999、Pt950、Pt900、Pt850の4区分が一般的です。日本ジュエリー協会の定めでは、”プラチナジュエリー”と呼称できるのはPt850以上となっています。

割り金に、同じく白金族で貴金属にも分類される「ルテニウム」を加えたものはハードプラチナと呼ばれ、同区分の通常プラチナ製品よりも高い強度を誇ります。

金とプラチナの価額推移

ここ数年はコロナ禍の影響、世界情勢が乱れている影響から金の価額が高騰しているという話はよく聞くかと思います。実際どうなっているのか調べてみました。

金の価額推移
2022年9月の金小売相場平均価格は8,573円、対して2021年9月は7,010円です。

プラチナの価額推移
2022年9月のプラチナ小売相場平均価格は4,345円、対して2021年9月は3,766円です。

銀の価額推移
2022年9月の銀小売相場平均価格は93円、対して2021年9月は90円です。

(*いずれもFUJIDENTAL小売相場推移表調べ)

プラチナと金の希少性と生産量について

有史以来、金が採掘された総量は約19万トンと言われています。

現在、金は毎年3,000トン前後が採掘されていますが、2019年時点において、地球上の埋蔵量は50,000トン程度と言われており、このペースでは遠からず枯渇する希少な資源と見做されています。そして銀の総量は推定140万トン、2018年における推定埋蔵量は約40万トンと言われています。

対してプラチナは、金に比べるとまだまだ歴史は新しく、有史以来の採掘量は5,000トン程度と言われています。ですが採掘済みのものも含めて地球上における推定総量は16,000トンと、金と比較して更に希少で、1トンの原鉱石からわずか約3gしか採取できないという、生産に非常にコストのかかる金属です。

希少性と生産量から見ると金よりもプラチナの方が希少性が高いことに気づかれると思います。ではなぜ現在希少価値の高いプラチナの方が価額が安いのか?それは金とプラチナでは需要がある分野に相違があるからです。

金は5割以上が宝飾用途への需要、1割程度が工業用部品の需要とみられていますが、プラチナは工業用需要が6割で宝飾品としては2割強程度となっています。自動車の排ガスから有害物質を取り除く自動車触媒にプラチナは使われることが多いのですが、自動車への需要が下がると車の売れ行きが悪くなり、その結果プラチナの価額も影響を受けます。尚、現在世界的には同じ白金属のパラジウムの使用率がプラチナよりも多い為、パラジウムがプラチナより価額が高くなっています。

ゴールドジュエリーの刻印と種類

皆さんは、何故K18やK14と表記するのか不思議になったことはありますか?

K18、K14、K10などに区分されるゴールドジュエリー。K24と区分されているものは99.9%の純金と見做しています。Kは「karat」の頭文字で、プラチナなど他の貴金属の純度が1000分率で表されるのに対し、金だけがK○○、○○K(前K、後Kとも言われます)このように表記されるのは、金がいかに人間と長い歴史を歩んできたかということにも関係します。金は遥か古代より貴金属として珍重されており、その頃にはまだ”パーセント”という概念が存在しなかった為に、一日の24時間を基準として含有率を表したと言われています。ちなみに日本では前Kで表記される事が多く、K18では純金の含有率が75%、K14で58.5%、K10で41.6%です。

カラーゴールドとは

金は割り金を加えることで色調を変えることが可能です。ホワイトゴールドやローズゴールドなどが広く知られているのでご存じの方も多いですね。カラーゴールドで、よくみられる代表的なものは下記の3種類となります。

●イエローゴールド

割り金に、銀と銅がほぼ同じ割合で配合されています。一般的に、純金の含有量が多いほど金本来の黄金色がはっきりと出て、逆に少なくなると肌なじみのよい淡いイエローへと変化していく傾向があります。

●ピンクゴールド(ローズゴールド)

赤みを出しているのは割り金として配合されている銅。

純金の含有量が多いほど優しい色合いに、少ないほどハッキリとした鮮やかな色合いとなります。

●ホワイトゴールド

割り金として、銀と、プラチナの仲間である白金族のパラジウムが配合されています。プラチナに近い色合いで、プラチナより軽く、またリーズナブルであるという特徴があります。

ホワイトゴールドは本来シャンパンのような色合いですが、より美しい白色を表現するために、白金族であるロジウムにて表面をコーティングすることが一般的で、それにより強度も確保されます。

金やプラチナの含有量の違いと見た目の差

前述の通り純金、純プラチナは非常に柔らかい素材の為、含有率が下がるほど強度が増し、変形しにくく、また傷もつきにくくなります。逆に、金とプラチナは耐蝕性に優れた素材で通常では変色(銀と違って硫化や酸化による黒ずみ等)のしにくい安定した金属ですが、その純度が下がるほど含有されている他の金属が化学変化を起こして変色しやすくなるという傾向があります。10金と18金では10金の方が硬くて変形しにくいが、変色を起こしやすいと言われているのはそのためです。

また、一般的なゴールドジュエリーに配合されている金属の中では金が最も重いため、その純度が上がるほどに製品自体の重さも重くなります。例えば全く同じデザインと作りのリングでも、K10とK18ではK18が重いということですね。

終わりに

今回の記事では、貴金属について少し掘り下げて書いてみました。
世界情勢や経済状況によっても貴金属の価額が変わるというのは大変興味深いですね。
当店もオーダーメイドのご依頼でお問い合わせをいただいた際、加工するときに必要な地金の重さを記載したお見積りをお出ししています。これを機会に貴金属の相場へも意識を向けてみてください。
世界情勢も、コロナに関することも、金融緩和なども・・・ジュエリーに全く関係ない事でも、それぞれ繋がって面白いと感じられるかもしれません。