金、プラチナ、地金、素材が高騰しているというお話

金の相場が高騰しているのはなぜか?

昨年は、コロナやウクライナ情勢の影響もあって金、プラチナ、地金、素材の相場が急激に高騰してきています。世界情勢が不安定化すると、金の価値が高騰するという話がよく聞かれますが、それは一体なぜでしょうか?

金は世界における絶対量が決まっている為、株の様な”成長資産”とは異なる”不変資産”と見做されています。
コロナ禍や諸外国の有事、またウクライナショック等の世界情勢の不安定化で、大多数の投資家が株などの資産価値減少の恐れから金などの不変資産に着目しています。それに加えて、世界的に現在インフレ現象が起きており、通貨の価値が下がってきていることも要因の一つでしょう。金は通貨の価値が下がると高騰する傾向にあり、現在の基軸通貨である米ドルの価値が下がると、一般的にそれに反比例して金の価額は上がります。

金の価値は通貨の価値と反比例する、ということは、もちろん現在の状況とは逆に金が下落するケースもあります。一例として2013年のキプロス問題、つまりは金融危機に陥ったキプロスがEUから救済を受けるに当たり、その資金捻出のため大規模な金の売却が行われる懸念が出たことで金の価格が急落するなどの事例はありましたが、とはいえ長いスパンでは、円ベースの金価格はここ20年ほどは大まかな傾向としてほぼ毎年、上昇している傾向にあります。

2021-22年におけるプラチナ、パラジウムの相場高騰

プラチナ需要の約40%、パラジウム需要の約80%は自動車触媒(排気ガスを浄化するために使用される)としての用途で、金相場とは異なり自動車の売上などの工業的側面の影響を強く受けます。

現在のプラチナ、パラジウムの価格高騰傾向には、いくつかの理由が複合的に絡み合っています。

まずは、パラジウムはロシアからの供給が全体の約40%を占めていました。
このことからパラジウムの価格が高騰し、次いでこれまで自動車触媒としてパラジウムを使用していた部分をプラチナへと切り替える動きが発生、プラチナの価格が高騰。

また、ロシアによるウクライナ侵攻勃発以前からも、海外諸国でのCOVID-19に対するロックダウン緩和に伴う自動車産業の活発化によってプラチナ、パラジウム需要の増加、そして昨今、世界的に脱酸素機運が高まっており、その中で”エコカー”と呼ばれるものの一つであるFCV(水素をエネルギーとする燃料電池車)は、現代の技術では触媒としてディーゼル車における自動車触媒と比較して約10倍と、大量のプラチナが必要とされることから需要の増加が見込まれており、これらの点を大きな理由として、ここ最近においてプラチナ及びパラジウムの価格は上昇傾向にあります。

終わりに

金についてはさておき、昨今のプラチナジュエリーにおける少し面白い点として、プラチナそれ自体はもちろんのこと、割り金として使用されるパラジウムの高騰により、同じ白金族であり、”今のところ”、パラジウムと比べて比較的安価で推移している「ルテニウム」を積極的に使用するケースが増加傾向にあることが挙げられます。

このルテニウムを割り金として使用したプラチナジュエリーは「ハードプラチナ」と一般的に呼称され、プラチナ含有量が同区分の一般プラチナ製品よりも高い強度を誇ります。その特性上、デリケートな形状でも強度を保つことができるために、これまでも細いリングや繊細なチェーンなどによく使用されていました(Pt999と高純度なプラチナ製品でも、ルテニウムを配合することでジュエリーとしての用途に耐えうる強度を確保できるという話も耳にします)。

もちろん、概ねの物事には良い側面と悪い側面が存在するもので、ハードプラチナは前述のようなメリットがある反面、その強度ゆえに加工が難しく、またリメイクや修理などにおいて対応できる店舗が限られることや、それらの料金が割高になってしまう可能性が考えられます。

ただ、ルテニウムの使用がより一般的になることで、プラチナジュエリーのデザインの幅は間違いなく広がります。制限は創造の母、とはよく言ったものですね。